2nd ANNIVERSARY
NEW COLLECTION Vol.2 「昇」(Shō) ~ Ascent
日本の伝統技術の保護と、職人の地位の向上を目指し、
2022 年に立ち上げられた MIZEN PROJECT。
もの づくりの背景に人の存在を感じることが新しい精神的な豊かさであること、
そしてそれを新たなラグジュアリー に昇華させると言う想いを込め、
初回のテーマ「勝」SHO に続き「昇」SHO を第 2 弾のテーマとしました。
「昇」のコレクションは、「立涌」~並列する2本の線の中央がふくらみ、
両端が細くなった形を雲気(水蒸気) が立ち上がる状態に見立てた文様~を意味します。
この文様は運気上昇の意味が込められ、
縁起の良い文様とされています。「竹」、「右上がりの段」、「鯉」、「龍」などを
モチーフに採用しました。また、輝く光が天に向かって昇っていく様子や、
黄色、ゴールド、白、あるいは夜明けの陽が昇る地平線のグラデーションの色を表現しています。
一足先に春を感じさせるMIZENオリジナルの反物たちは
スポーティな新型シャーリングコートに乗せて
新作シャーリングコート
ウエストと袖口に江戸打紐を通し、ギャザー分量を調節することでボリュームをコントロール。
高く大きめのスタンドカラー、ファスナーの前開き
前立て裏に入ったロゴ入りテープ、反物4枚分のたっぷりとしたボリュームが
スポーティーでありながら洗練された印象を与えます。
またオプションとして、袖口にシャーリングの有無や
浮いたように見えるカフスを螺鈿仕様に変更することも可能。
鋭角と曲線、段差と直線が混在するデザインは
不揃いの中に絶妙なバランスを持たせており
メンズでもレディスでもない中性的な雰囲気を演出します。
COLLECTION

南風原花織「昇」クヮンクヮン花織経絣
(沖縄県/TEORI WORKS OKINAWA 宮城麻理江)
竹林の光を纏う 琉球絣が織りなす陰影の美
【クヮンクヮン花織】
主な技法となるクヮンクヮン花織は緯浮の花織で、
南風原独自の呼び方です。
獅子舞が毛を揺らして踊る様を方言で
『シーシクヮンクヮン』といい、
布裏部分に出ている糸がその様を表しています。
【経絣】
花織を引き立てる経絣は、琉球絣の捺染という技法を使い、
竹林に光が差し込む様子をイメージして
陰影が出る様に絣の配置をしました。
石下結城紬「昇」八十細工亀甲飛び柄 昇り鯉
(はちじゅっざいく きっこうとびがら のぼりごい)
<茨城県/奥順>
伝統と技巧で描く、優雅に泳ぐ二匹の鯉
結城紬で使われている絣模様、亀甲絣と十の字絣を使い、
直線で作られている絣を使うため、鯉のおなかの
ふっくらとした柔らかい曲線を出すことは難しく、
絣のひとつひとつを付け足したり取ってみたりを繰り返す
ことにより、流れるように優雅に泳ぐ
二匹の優しい鯉をデザインしました。
昭和30年代前半から結城産地に導入された
「間差し込み」という技術で地色のボカシを表現しています。
当産地はかつてから縞柄の生産が盛んだったこともあり、
経糸の扱いを得意としてきました。
経糸に複数の色を使用し、
1本1本を入れ替えながら自然な色合いでボカシを
表現することで、縞柄にはない柔らかな雰囲気になります。
反物の作り手である機屋さん、染屋さんの
繊細な作業があってこその表現です。


下井紬「昇」バイアスブルー
<長野県/下井伸彦(廣田紬株式会社)>
春を思わせる爽やかなブルーに絣で表現された空の光。
使用した特徴的な技法は浮き織り(花織)とメガネ織。
シンプルな色表現のなかに組織織を用いて生地に凹凸を加え、
生地が動いたとき見えるようにアクセントを加えた。
経糸配列を1:1の網代配列とし、地の表現にもこだわった。
大きなカフスは、袖口につけられた江戸打紐で
袖のボリュームを調整することによって
浮いているかの様に存在感が増します。
*江戸打ち紐(えどうちひも)は、ロープ状の組紐(丸紐)の一種で、
糸を太くして 8 打ちで粗く組んだ紐で、日本の伝統的な技術です。
米沢織「昇」暁光(ぎょうこう)
(山形県/よねざわ新田)
暁の山際に風受けたなびく陽の光
真綿手引き紬使用。手引きの証である「ふし」で
全体に素朴感と織り色の豊かさが表現される。
そして、繭から製糸撚りをかけた諸糸を
使用することでシルクの光沢感も見え、
それは、着装したときの曲線生地では見え方が違う。
色数は、先染めにて経糸10色、緯糸2色使用。
配置は、割り込み。
(図案から一本ずつ数え、柄を構成していくやり方)
夜明けの光、輝きを表現するため段階的にボカシにし、
光の流れ、透明感、空気感、ゆらぎ、変化などを表現した作品。
技術が主役のファッションを掲げるMIZENは、
日本全国に存在する手仕事をブランドに
というコンセプトから、作品ごとに
職人の名前をネームに刻んでいます。
*真綿(まわた)は、繭から引き伸ばした綿状の絹素材で
柔らかく軽いのが特徴です。
保温性・吸湿性に優れ、布団や絹織物に利用されます。
天然素材と手仕事の温もりが魅力で
日本文化に深く根付いています。


「立涌流星暈」タテワクリュウセイウン
(京都府/民谷螺鈿)
初めての表現である、貝殻糸を使っての暈しを試みたが、
貝殻糸が密に生地の表裏を行き来することで起こる、
周辺生地の歪みによる皺が問題となり、
この解消のための貝殻糸の調整の試験に大分手を取られた。
成功するまでの紋紙を変えての試織数は10回を超え、
糸使いの変更も入れると20回近い試織を繰り返し生地の完成を見た。
カフスは螺鈿仕様にすることも可能。
螺鈿の色バリエーションもございます。
MIZEN
「余白を楽しむプロジェクト」
A Project to Interpret the Unseen
MIZENは 目に映る美しさの奥に広がる産地の風土や歴史 職人の技術 そして生き様といった『余白』こそが我々の作品の本質的な価値であると考えています。
現代のファッションは 瞬間的で視覚的な刺激が重視されるがあまり過度なスピードが求められています。
その加速された消費の世界では本来時間をかけて丁寧に仕上げられるべき手仕事が評価の舞台にすら立つことができません。
伝統技術の衰退は我々一人ひとりが無自覚に求めている『欲望の速度』によって引き起こされているのです。
だからこそ私たちはそのスピードを緩めたときに見えてくる新鮮で豊かな世界を作品を通じて提示したいと考えています。
MIZENが目指す道は現代の流れに逆行する 静的で悠然とした美の在り方への挑戦かもしれません。
しかし日本にはかつて「余白を楽しむ」という価値観が確かに存在していましたそれはものの奥に潜む物語や気配を自ら感じ取り想像し心を満たす行為であり日本人が長い歴史の中で培ってきた美意識でもあります。
私たちは 現代の人々が忘れかけているこの感性を日本各地に点在する伝統技術とともに再び呼び覚まし世界へと届けていきたいと考えています。
そしてその余白に自ら気づき 埋めていく過程に喜びや幸せを感じられることこそが物質的経済的なラグジュアリーとは異なる精神的な新たなラグジュアリーの在り方だと信じています。
MIZENは「余白を楽しむプロジェクト」として日本の伝統技術を「ブランド」として昇華させるために職人たちの手仕事とその奥に眠る物語を洋服という形にのせ新たなラグジュアリーの可能性を問い続けていきます。