螺鈿織
RADEN ORI
京都府 KYOTO PREF.
光のゆらぎ、海の煌めきを閉じ込めた織物
「貝殻を織物にできたら」
1970年代、貝殻の持つ海の輝きに捕りつかれた丹後の織物業者、
民谷勝一郎は約2年の研究を経てこれを現実のものとしました。
螺鈿の螺は貝殻を、鈿は細工のことをあらわします。
日本では漆の加飾として発展し、蒔絵の技法の名称として定着しました。
この「螺鈿」と織物伝統技法「引き箔」を融合し、新しい技術「螺鈿織」が生まれました。
和紙の上に 薄く板状にした貝殻を形に切って貼りつけ、
これを糸状に細く裁断したものを緯糸として織り込むというものです。
今までの概念を破り、柔軟性をもった織物として貝殻のもつ海の煌めきが表現されています。
糸作り
螺鈿織の糸作りでは、まずデザイン画を元に型紙を作成します。
螺鈿が一番美しく見えるような配置や組織を考えます。
型紙の図案に沿って薄く削られた貝を箔に貼っていきます。
湿度や温度によって糊の定着具合が変化するため、糊の調合を替え、貝がはがれないように作業します。
単純に貼るのではなく、螺鈿の輝きがより美しく見えるように
貼る角度を変えたり、工夫しています。
箔の裁断
丁寧に箔に貼られた貝のシートを裁断機の刃で0.6m/mー0.75m/m幅に均一に裁断します。
少しのずれが製織したときに傷となってしまうため、
裁断時には、箔がはがれないように丁寧に固定をします。
箔をさばきながら均一に裁断されているのか確認し、再度納品されます。
製織(セイショク)
シルクの糸を枠に巻いていき、製織の準備をします。
裁断された箔を道具を使い、一本ずつ箔が裏返らないように丁寧に織り込みます。
左から右へ箔を引くことから引箔(ヒキハク)と呼ばれ、
西陣織帯地の伝統的な技法です。
螺鈿の真珠層が揃って織られているかを箔を一本織るごとに、下についている鏡で確認します。
真珠層を揃えることで螺鈿の輝きが際立ちます。
その後、背面にまわった箔を2mm程度残し、丁寧に一本一本はさみでカットします。
このように、螺鈿織はたくさんの丁寧な手仕事から生まれました。